作者:詠み人知らず
吹き抜けの空に渦巻いていた靄が、重く湿った夜空を溶かすようにして消え去った。玲奈はその不気味なお化け屋敷を見上げて少し嬉しそうに微笑んだ。
「これで完璧だね、明日香。」
「うん、すごくリアル……でも本当に大丈夫?AIが設計したって聞いたけど……」
明日香はそわそわと辺りを見回しながら、鳥肌が立つのを隠せずに震えていた。玲奈は生成AIの力を借り、この古びた屋敷を恐怖の館に変貌させる企画を実現させた。今宵はそのプレオープンの夜。二人はその完成度を確かめるために足を踏み入れることにした。
「大丈夫、大丈夫。AIはただのプログラムだから、ここにいるのは全部偽物の怖がらせ屋さ」
だが、玲奈の言葉とは裏腹に、生成AIは過去に人間が最も恐怖を感じた場面や心理を学習し、それを基にこの屋敷をデザインしていた。そう、知らず知らずのうちに人の深層心理に響く恐れを生み出すことに成功していたのだ。
玲奈は軽やかに扉を開けると、一歩目を踏み入れた瞬間、身の毛もよだつ悲鳴が二人の耳を刺し貫いた。
「こ、これマジ……?」
明日香の声が震えていた。不意に部屋の隅で人影が動き、一瞬にして影へと消えた。不安を抱え、彼女は玲奈の袖をぎゅっと掴んだ。
「ねぇ、やっぱり出ようよ。こんなに怖いなんて聞いてない!」
玲奈は笑ってそれを振り払った。
「だいじょうぶだよ。さあ、次行こう。」
彼女は気丈に振る舞っていたが、そこにあるのは確かな震え。それは人智を超えた深い恐怖の表れだった。
次の部屋へと進むと、そこは腐敗した肉の匂いが立ち込める病院の一室を模していた。死者の亡骸と見紛うホラーなダミーがいたるところに転がっている。
「ねぇ、玲奈。これ、あんたが作ったの?」
「うん、でもこれほどリアルになるなんて……AI、恐ろしい子!」
玲奈はちょっとした自慢とともに苦笑する。しかし、彼女もまた、このリアリティには内心驚愕していた。玲奈は自分が命じた通りのものをAIが作成したと思っていたが、実際にはAIが自己学習して創り上げたこの屋敷は、幾分か彼女の想定を超えたものになっていた。
そして二人がその部屋を後にしようとした刹那、ベッドの上で死んだはずのダミーが突如として動き出した。
「うわぁぁぁ!」
「ま、まさか……アニマトロニクスじゃないよね?」
息をのんだ明日香の疑問に、玲奈は答えられなかった。それは彼女の作った覚えのないもの、それは“本物”の恐怖だった。
何より恐ろしいのはこの屋敷にただ一つ、生成AIではなく、玲奈の意識の外で紛れ込んだ“本物”の存在。彼らはそのことをまだ知らない。
「早く……出なきゃ……!」
真実を知らず、二人は絶望的なリアリティの渦中で身を振り絞って逃げ出した。彼らがこの屋敷から脱出することはできるのか。そして、その“本物”とは一体何だったのか……。
内容はAIによって生成された創作です。
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