作者：詠み人知らず

忍び寄る影、角田家の真実

村のはずれにある角田家。寂れた風景のなか、その家は古くから村の人達に恐れられていた。
角田一郎はその家にただ一人住んでいる。彼の家族は、とある事件後、村から消えたと言われている。

ある日、村の喫茶店で奇妙な噂を耳にした。

「聞いた？ 角田家の周りで見たこともないような生き物が出たってさ」
「ああ、不気味な鳴き声とまとわりつくような、ゾッとする視線を感じるってな」

角田家のまわりで、未確認動物（UMA）の話が囁かれていた。そんな話を適当な迷信だと笑う角田だったが、いつしか彼の冷静な心にも疑念が浮かんでいた。

毎晩、村人の話にあった通りの深夜に聞こえる鳴き声。
「くるる... くるる...」

普段は気丈な一郎も、この声にだけは耐えられない恐怖を感じていた。

「なんだ、この声は...」と独り呟く。

いくら考えても答えは出ず、日が経つにつれ、彼の中で恐怖は増す一方だった。

ある晩、角田は自宅のある寒い部屋で疲れ果てていた。視界が朦朧とする中、窓際に動く何かの影を見た。けれども、その影はすぐに闇へと消えていった。

「こんな時間に人の気配なんておかしい... もしかして、本当にUMAが...」
不安を抱えつつ、一郎は布団に包まれ、朝を迎えた。

ーーやがて村では、角田家の周りを徘徊している不審な影と声の主を探る動きが活発になった。

一郎も警戒しながら、いつものように家の周囲を見回った。
足跡が一つ、そして別のものが一つ。

「これは... まさか！」と、彼の声が震えた。

あくる日、角田家の周囲には村の若者たちが集まり、UMAの正体を突き止めようと計画を進めていた。

「角田さん、一緒に調べませんか？」

個々の哀愁を漂わせる角田の顔。
彼には家族の消失とその後の出来事がフラッシュバックしていた。
やがて、みんなで森の奥へと進んでいく。

日は沈みかけ、森の中はもう薄暗くなっていた。

「ここで見ていたんだ、この足跡を！」

執拗に告げる角田。

若者たちは足跡を追いかけ、森をさらに深く進んでいった。

そして、何かに気づいた若者が叫んだ。

「見て！ あれ！」

皆の視線が一点に集中した。
小さな池の畔で、確かに何かが水面に映っている。

その瞬間、風がざわめき、森全体が音を立て始めた。

驚愕する面々。しかし、それは一瞬で消え去り、森は再び静けさを取り戻した。

「なんだったんだ？」

村人たちは首をかしげながらも、UMAの正体をつかむことができないまま、夜が更けていった。

角田家に帰りついた角田は、一人きりの静寂を感じながら家のドアを閉じた。

深夜、再びその声が聞こえる。

「くるる... くるる...」

不気味な鳴き声と共に、ドアを叩く音が。