作者：詠み人知らず

文芸部のマメ知識バトルロイヤル！

春の陽気に誘われるように、文芸部の部室の窓が開け放たれていた。桜の花がひらひらと舞い込む中、部員たちは和やかな雰囲気の中で茶を啜っていた。

「そう言えばね、南田くんは歴史の知識がすごく豊富だって、前に聞いたよね？」
「まあな。江戸時代のお侍さんたちのエピソードなんて、僕の十八番さ」

南田はいつも通り、得意げに胸を張った。高校二年生にして、その知識の深さは教科書の範囲を遥かに超えていた。

困ったように笑いながら、北山が続ける。

「じゃあ、ゲームやアニメの知識なら私には敵わないでしょう？」
「へえ、それなら僕のスポーツ知識、試しに勝負してみません？」

西田が加わり、気づけば文芸部の部屋はマメ知識を誇る者たちの戦場となっていた。
文芸部部長の東山がにっこりと微笑んで、ジャッジの座に就く。

「それじゃあ、今日の部活は特別企画。『文芸部マメ知識王』決定戦を行おうじゃないか」

一同から歓声が上がり、部屋には競争の火花が散り始める。

「ではルール説明だ。それぞれが得意分野からランダムに出題される問題に答えてもらう。間違えたら即失格、最後まで残った者が文芸部のマメ知識王だ」

東山の言葉に頷く南田と北山、そして西田。彼らの目は真剣そのものだ。

最初の問題が出されると、南田はたちまち答えた。

「それは坂本龍馬が運営に関わっていた、海援隊のことだな！」

次に北山が難問を前にしても動じずに答える。

「そのキャラは『魔法少女リリカルなのは』のフェイト・テスタロッサだよ。特徴的な長い金髪が印象的！」

西田も負けじと。

「その年のセリーグホームラン王は、もちろん清原和博だ！」

三者三様、一歩も譲らない。時間が経つにつれて部員たちの間には緊張が走る。

しかし、だんだんと笑い声が聞こえ始めた。

「お前ら、そんなにマメ知識を詰め込んで、頭重くない？」
「ははっ、そう言うお前もなかなかだぞ」
「いやいや、私たち文芸部だもの、知識は武器よ！」

競争と共に友情も深まる一幕だった。

そしてついに、最後の問題が出された。
「マメ知識といえばコイツ、全部の質問に答えられれば真の知識王だ。さあ答えなさい、世界一小さい豆はなんだ？」

部員たちは面食らった表情になったが、東山はにやりとしていた。

「答えは…誰にもわからない。だからこそのマメ知識なのだよ」

笑いながら東山が締めくくると、全員が思わず笑い出した。

「まさかのオチかよ！」
「部長、それは反則でしょ！」
「でも、何だかんだ楽しかったかな」

結局、マメ知識王を決めることはできなかったが、文芸部の絆はより一層深まっていた。
マメ知識バトルの幕は笑いとともに静かに閉じたのだった。