作者：詠み人知らず

転生悪役令嬢と運命の逆転

雨音を聞きながら目を覚ました瞬間、私はまるで違う世界にいた。

「こ、これは...もしかして、悪役令嬢!?」

そう、私は前世で読んでいた乙女ゲームの世界に転生してしまったらしい。しかも、そのゲームで最も恐れられる悪役令嬢に。

「っ、これから私はヒロインたちに嫌がらせをして、最終的に追放される運命...か」

名前はエリザベス・フォン・クレマリスエレバーン。我が家はこの国の名門であり、しかし、その名声とは裏腹に、私はまったく魔法が使えない。

そう、この世界は魔法が生活の一部となっているだけに、魔力の無い私は既に家名を汚す存在であり、そのせいで、ヒロインたちへの嫌がらせに走るという悪役令嬢。

「でも、こうなった以上...せめて、運命を変えたい！」

エリザベスである私は心を決め、立ち上がる。

ーー目覚めたその日から、私の運命を変える戦いが始まった。

学園生活がスタートし、我が家の名に相応しい優雅な振る舞いで、ここぞという時には平民出身ヒロイン、リリアーヌを助ける。

「リリアーヌ、言いたくない事は押し殺さなくていいわ。自信を持って」

エリザベスはヒロインを励ます。そんな彼女を見て、まわりの生徒たちは驚愕の表情を浮かべていた。敵だったはずの悪役令嬢が、困っているヒロインを助けるなんて。

「ううん、ありがとう、エリザベス。君は想像していた悪役令嬢と全然違うわ...」

リリアーヌが感謝の言葉を述べながらも、その瞳は疑問に満ちていた。

日々が過ぎ、私はリリアーヌとの友情を深めるとともに、一緒に学園生活を楽しむようになった。それは、本来のゲームのシナリオにない展開。

そして、次第に私にも変化が。自分自身、そして他者を思いやる気持ちが魔力を呼び覚ます。

「これは一体...!? 私、魔法が使えるように...!」

驚くエリザベスの手から、小さな火の精が飛び出した。

会心の笑みを浮かべるリリアーヌ。

「あなたが変わろうと思ったから、魔法が使えるようになったのよ。それがあなたの真実の力」

時は流れ、エリザベスは多くの仲間と共に国の危機を救う英雄となった。それは、誰もが予想だにしなかった「追放」ではなく、「称賛」の結末だった。

そして、リリアーヌとの友情は永遠のものとなった。二人は手を取り合いながら笑い、この不思議な出会いに感謝していた。
「リリアーヌ、今度は私があなたを守る番よ」

そう誓ったエリザベスの目には、強い意志と優しい光が宿っていた。