作者:詠み人知らず

大樹の下の楽園生活

深緑が溢れる森の中、大樹の根元で、エルザは目覚める時を迎えていた。彼女のゆるやかな呼吸は、周りを生き生きとさせる魔法のように、樹々や花々を揺らしていた。

「ん〜、またすてきな朝ね」

エルザは長い睫毛をパチパチとさせながら、漆黒の瞳をゆっくりと開けた。そこには、いつものように、言葉を話さない小さな妖精たちが彼女の目覚めを待っていた。

妖精たちは声こそ出せないものの、そのきらきらと変わる表情やあどけない動作で心を通わせる。エルザと妖精たちは、会話をすることなく、お互いの思いを理解していた。

エルザは体をのばし、足を踏み出すと、朝露に濡れた草木の中を歩きだした。足元には妖精たちがちょこちょことついてきた。

「今日のご飯はどうしようか? せっかくの素敵な朝だし、特別なんか作ってみる?」 身振り手振りで会話するエルザと妖精たち。妖精たちは小首をかしげながらも、賛成の意を示す。

森の中をひととおり歩いて、エルザは様々な果実やキノコを収穫し、それに加えて、清らかな小川で水を汲んだ。どんなご馳走を作ろうかと考えるだけで、彼女の心は踊る。


妖精たちもその準備を手伝い、あっという間に心温まる朝食ができあがった。新鮮なフルーツ、香ばしいキノコのソテー、そして森のハーブを効かせたお茶。ここでは時間が流れることさえ忘れさせるような心地よい食事が、いつもの日常だ。

「ふふ、美味しいわ。やっぱり、自然の恵みは格別ね」

ふわりと風が吹きぬけると、木々の葉がそっと音楽を奏でた。まるでエルザたちの食事を祝福するかのように。

食後はのんびりと過ごす。時には妖精たちと遊ぶこともあった。木の上を飛び回る妖精たちを、笑いながら追いかける。しかし、力いっぱい飛ぶことはせず、いつものんびりと、森の時間に身を任せる。

やがて夕暮れが近づき、エルザは再び晩餐の準備を始めた。夜の静けさの中に、徐々に灯りがともり始める。妖精たちもその光に引かれ、ひとしきり飛び回った後、エルザの元に集まってきた。

「今日も素敵な一日だったわ。明日もきっと、すてきな日になる」

森の夜を照らす星々の光に、エルザは感謝しつつ低い声でつぶやいた。そして、妖精たちと共に静かな夜へと身を委ねたのだった。

何事もなく、ただ穏やかに1日を終える。エルザにとってそれが至福であり、また、明日への活力でもあった。

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