作者:詠み人知らず

東京消失

5月の満月の夜、かつての同級生であるA子、B美、C助は、久々に集まって秘密の場所で話し込んでいた。

「東京タワーの頂上から飛んだらどうなるか知ってる?」B美が不気味な笑みを浮かべながら言った。

A子とC助はどちらもサプライズな表情でB美を見つめた。

「飛んだら死んじゃうでしょ?」とA子が真顔で答えた。

「それがさ、その通りなんだけど、実はある都市伝説があってね。」とB美が得意げに語り始めた。

それは東京タワーから躍り降りると、その人は時間と空間の音瀾を超え、30年前の東京にタイムスリップするというものだった。

「それって、ただの都市伝説だよね?」とC助は興味津々な目で問い掛ける。

しかし、B美はソワソワとした眼差しで周りを見回し、「実はそれが、ほんとうなことなのよ。友達の友達が、本当にタイムスリップしたんだってさ」と言い放つ。

A子とC助はB美の言葉に驚愕、びっくりした。

どんなに都市伝説が怖いものでも、それはあくまで伝説に過ぎないと思っていた二人は、B美の言葉にあたふたとしてしまった。

「それじゃあ、誰か東京タワーから飛んだら1030年前になるんだろう。でもその後に何が起きるんだ?」とA子が興味津々な眼差しでB美に問い掛けた。

「それがね、その後は…」B美の口元から出た言葉は、C助とA子に元気を与えることが出来るかのように思えた。

しかし、その直後、周囲の風景が変化し始めた。三人がいた場所は、1030年前の東京へと変わり果てていた。

思わずA子は叫んだ。

「もしかして、これって……」

完全に風景が変わった後、B美を除く二人の姿は消えていた。

「それがさ、その後は…」B美の声が空しく響く空間に、A子とC助の姿はどこにもなかった。

そしてB美はひとり東京タワーの下でポツンと佇む姿があった。

B美はパニックになりながらも周囲を見渡すも、人々の面影は全く無かった。

顔面蒼白になりながらも、B美はソロソロと東京タワーに向かって歩き始める。

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