作者:詠み人知らず
雨が降る夜は、なぜか心がざわつく。薄暗い部屋の中、カーテンの向こうで雨粒が窓ガラスを叩く音が響いていた。
学生寮の一室で、ぼくはベッドに横たわりながら、今日一日の出来事を思い返していた。
「雨、降り続いてるな……うるさいよ」
隣のベッドで同室のトオルがぼやいた。彼は雨の音が苦手で、いつもいらいらしている。
「センパイ、雨って嫌いですか?」
僕は少し笑ってそう問いかけた。大学三回生のぼくはこういう夜が好きだ。なぜなら、ストーリーが湧き上がってくるからだ。
「別に嫌いじゃないけど、音が……」
トオルは言葉を途中で切った。
突然の静寂が部屋を支配する。雨音もなく、二人の息遣いだけが聞こえる。
「今、なんか聞こえなかった?」
トオルが囁いた。
返事をする前に、ぼくもそれを感じた。雨音に交じってほのかに聞こえる足音。カーペットの上を歩くような、くぐもった音だ。
「……誰か歩いてる?」
トオルの声が震えていた。
僕たちは寮の三階にいる。この時間に誰が、いや、それ以上に、廊下はカーペットではなく、硬いフローリングだ。
ーーち、ち、ち……
音は近づいてくる。部屋のドアに。
「ドア、開いてないよね?」
トオルの問いに早く答えたいが、喉がカラカラで声がでない。
ち、ち、ち……
ドアノブがゆっくりと回る音がした。だけど、鍵はかけてあるはず。
トオルが飛び起きて、ドアに駆け寄る。彼がドアの鍵を確認すると、ガチャ、と音がしてまた元に戻った。きちんと鍵はかかっている。
「な、なんだったんだ……?」
彼が問いかけると、その時、部屋全体に重苦しい空気が満ちた。そして、高い女の声が聞こえた。
「あなたたち……」
声はどこからともなく聞こえた。トオルは震えている。
僕は立ち上がり、勇気を振り絞って言った。
「だれですか? 何がほしいんですか?」
すると、部屋の隅から小さな人影が、ぼんやりと浮かび上がった。
「あなたたち……私のこと、忘れたの?」
その影は僕たちの昔のクラスメート、ミヤビのものだった。だが、彼女は今年の春、事故で亡くなっている。
「忘れるわけないだろ!」
トオルが叫ぶ。ミヤビの影はぼんやりと微笑んでいるように見えた。
急に雨音がまた、大きくなる。影は霧のように消えていった。
部屋には再び平穏が戻り、外の雨音がリズミカルに復活した。
「何だったんだろう……夢かな」
トオルは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
僕はただベッドに戻り、心の中でミヤビに別れを告げた。
夜は更けていく。雨はまだ降り続けている。だけど、もう怖くはない。
友達が見せた最後のあいさつだったのかもしれないと、僕は思うのだ。
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