作者:詠み人知らず
おじさんが転生したらイオンモールだった件
武史は夢の中で楽そうに暮らしている。
まるで空に浮かぶ巨大な鯨のように、彼は静かに眠る街を見下ろしている。
数多の店舗が彼の体内に広がる広大な通路に沿って整然と並び、その光景はまさに超巨大ショッピングモールだ。
それが、異世界での彼、まさかのイオンモール転生だった。
「おいおい、何これ。俺、マジで建物になってるのか?」
武史がその事実に戸惑う。
そんな彼を見て、神様が苦笑いしながら語る。
「まあ、そういうことだ。お前がこの世界で生きていくためには、それが最善だと思ったんだ」
「最善って何だよ。ショッピングモールになるなんて、そんなの考えたこともなかったぞ」
「だから、それがお前にとって最善なんだよ。異世界では、ほとんどの者が何かに転生し、新たな生を歩む。お前もまた、そういう運命にある」
そして神様は姿を消してしまった。
新たな人生、それはショッピングモールとしての人生だった。
初めは戸惑い、苦しみ、悩みの連続だった。
だが、武史は次第に自分が街を元気にする存在だと理解するようになった。
「おじさん、いつもありがとう!」
街の人々が笑顔で声をかけてくる。
子供たちは遊び場で遊び、大人たちはショッピングや食事を楽しみ、お年寄りたちはゆっくりと時間を過ごす。
その度に、武史の心は温かさで満たされた。
「ああ、なるほどね。これが、俺が転生した意味なのか……」
そして武史は、異世界のイオンモールとして、新たな日々を送ることになった。
人々が笑顔で過ごす街。
それは彼が見てきた風景とは違う、新たな風景だ。
異世界での、イオンモールとしての生活。
それは転生した武史の、第二の人生だった。
そして彼は、自分が街を元気にする存在として生きていくことを誓った。
「いつまでも、おじさんのイオンモールが街を盛り上げてくれますように!」
その願いが、次々と来る人々の笑顔とともに、異世界の空へと響いていく。