作者:詠み人知らず

永遠のエルフ、時の彼方へ

かつて、勇者たちは世界を救った。魔王を討伐し、平和が訪れたあの日から五十年が流れた。昔の戦友たちもそれぞれの道を歩み、歳月は英雄たる彼らにも容赦なく時を刻んでいた。

しかし、エルフのレイリアは変わらず若々しく、その容姿には半世紀の重みが微塵も感じられない。彼女は森深くにある塔で魔法の研究に明け暮れていた。
「ふむ、この古文献にある魔法陣、もしかして……」
図書室に溜息がこだまする。彼女の研究は常に新たな発見と驚きに満ちていた。

そんなある日、レイリアは昔の仲間たちを訪ねることに決めた。

最初に訪れたのは、勇者ジャンヌの家だった。彼女は勇猛にして賢明、かつての魔王討伐の中心人物である。
「レイリア、久しぶりじゃないか」と、しみじみとした笑顔で迎えてくれた。
「ジャンヌ、変わらぬ風格だね。街での暮らしはいかが?」
「まあまあだ。戦いは昔の話、今はこの小さな庭が私の戦場だよ」と、ジャンヌは手入れされた花壇を指さしながら答えた。

続いて訪れたのは、ホビットのヒーラー、ポポルの教会だ。
「レイリア、懐かしい面影やな。我々ももういい歳じゃ」
「ポポル、司祭になってからも変わらずに多くの人を助けているんだね」
「うむ、小さな力でも、できることはしていきたいのじゃ」
心温まる笑顔と共に、ポポルは孤児たちへの食事の支度に戻っていった。

山の洞窟に暮らすドワーフの戦士、ギムレックの元へ向かった時には、変わらぬ鍛え抜かれた躯と酒好きは健在だった。
「雷鳴のような笑い声を聞くと、戦場の記憶が蘇るな!」
「お前さんたちエルフは羨ましい。オレはもう少しでこの世を去るが、最後まで豪快に生きるぞ!」
ガハハと笑い飛ばす姿に、レイリアは心の底から敬意を表した。

最後に待っていたのは獣人族のシーフ、リナードの孫の家だ。
「お祖父さんからよく貴方の話は聞いてますよ!」と若い獣人が元気よく話す。
「リナードは?」
「もうこの世にはいませんけど、最後まで陽気でしたよ。今でも大冒険の話は家族の宝物です」
リナードの陽気さは、彼の子孫たちの笑顔に引き継がれていた。

レイリアは旧友たちとの再会に心を満たされながら、再び森の塔へ戻っていった。しかし、しばらくしてから彼女は驚くべきことに気づいた。

「これは……時を駆ける魔法……?」
昔の魔法陣の研究が意外な結末を迎えたのだ。時間を遡り、未来へ進む力を手に入れることができた。

さて、レイリアは不老の身でありながら、過ぎ去った日々を追い求めることはせず、新たな時代の冒険へと踏み出すことを決意した。

「この魔法で、再び仲間たちと笑い合う未来を――」
そして、一人のエルフが、時の彼方へと旅立つ準備をしていた。

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