作者:詠み人知らず

密室の呪いと千年の魔女

澄み切った青空が広がる中、古びた小屋から煙がもくもくと立ち上る。小屋の扉はぎしりと開き、街外れにひっそりと暮らす千年の魔女、マリアが佇んでいた。

彼女の眼光は鋭く、常に何かを見透かしているかのよう。薬の調合が得意でありながらも、人々との交流は避けがちな陰気な性格だ。

「またしても問題が起きたみたいね」

村長のグレゴリーが、困った顔でマリアの小屋を訪れた。彼は頭の回転は決して速くはないが、村の人々からの信頼はある。少なくとも、マリアへの依頼事はしっかりと伝えにくる。

「リュークだ、兵士のリュークが襲われたんだ。部屋の中に倒れていた...鍵はかかっており、窓も閉じていた。密室の中で、だ」

事件が起こるたびに、村では不思議なことにマリアに真っ先に相談する風潮があった。彼女が解決策を持っていると思われているのだ。

「悲鳴を聞いた町娘のララが駆けつけたそうだ。しかし、鍵はかかったままで中にはいれなかったと。」
「ふむ、それで?」

ララは酒場で働く明るい十六歳の娘。いつもマリアに憧れながらも、魔女が得意とする薬や魔術よりも、明るい笑顔と元気の良さで人々を惹きつけていた。

「お前に頼みたい。この怪事件の謎を解き明かしてくれないか?」

マリアは少し考えると、重いドアをくぐって外に出た。足早にリュークの家へ向かっていく。密室の謎とは。興味が湧いていた。

事件現場には、既に何人かの村人たちが集まっていた。

「マリアさん! リュークはどうしてしまったんですか?」
「それを調べに来たのよ、ララ」

ララは真剣な眼差しでマリアを見つめる。何も答えられずにはいられない。

部屋には確かにリュークが倒れていた。その額には、まるで何かに撃たれたかのような傷があり、部屋にはなにも異常はない。ただし、壁には不思議な印が描かれていた。

マリアはその印を見つめると、何かを悟る。彼女は袋から特異な香りのする薬草を取り出し、謎めいた囁きとともに壁の印にまき散らした。

煙が立ち上る中、壁に隠された仕掛けが現れた。それは外から操作することで中の人間を襲う装置だった。

「これは...誰かがリュークに恨みがあって...」
「そのようね。しかしその誰かを特定するのは容易じゃないわ。だが、落ち着いて考えれば答えは出るはず」

マリアは冷静に部屋を観察する。ついに一つの痕跡を見つけた。それは、装置を操作した者の手袋に付いた特有の繊維だった。

「これで犯人は分かったわ。リュークを襲ったのは...おそらくこの村にいる」

ララをはじめ、村人たちは一様に驚いた顔を見せる。

「そうか、マリアのいう通りだったのか」
「そうよ、グレゴリー。この繊維はこの村でしか手に入らないもの。犯人はこの村にいるに違いない。私はその答えを知っているわ」

その夜、犯人はマリアによって暴かれた。謎はすべて解決し、村人たちは再び平和を取り戻した。そして、魔女マリアの噂はさらに広まるのであった。

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